シンスプリント
スポーツ選手であれば、怪我や痛みとは隣り合わせ、どんなに気をつけていても、競技をしている以上は怪我への不安はつきないものです。その中で、ランナーをはじめとするトラック競技や、バスケットボールなどの走る量の多いスポーツで起こる怪我(痛み)として代表的なものがあります。それが「シンスプリント」です。なんだか横文字で響きがカッコいい気がしますね。
カッコイイ響きとはうらはらにシンスプリントは、競技人口の多さに比例し悩んでいる人の多い怪我(痛み)なのです。
今回はこの「シンスプリント」についてのあれこれをお話したいと思います。
シンスプリントとは
シンスプリントはシン=Shin(脛・すね)の症状で、
正式名称は
脛骨過労性骨膜炎
(けいこつかろうせいこつまくえん)
と言います。
膝下の内側にある脛骨(けいこつ)の下側1/3の痛みを特徴とします。
脛骨とはなんぞや、という説明をしますね。
◇脛骨◇
脛(すね)の骨と書いて脛骨 下腿を形成している骨のひとつで、膝下の内側にあります。 下腿の足首まで伸びている長い骨は腓骨(ひこつ)と言いますが、 脛骨の方が太いため、こちらがメインの骨となります。
脛骨にヒラメ筋や腓腹筋などの筋肉がくっついて足へ伸びていきます。
走る動きの際に筋肉は伸びたり縮んだりしますが、筋肉が柔らかくなければ十分に伸びないため、くっついている骨の膜に負担がかかり、炎症が起こってしまいます。これがシンスプリントになるメカニズム。
痛みがあるのは筋肉ではなく、骨膜の炎症のための痛みが起こるのです。
症状
症状は色々で、脛骨の下側1/3に痛みが発生するのが特徴と言いましたが、人によっては下腿全体の痛みの場合もあります。
具体的には
・運動開始直後は痛みがあるが、身体が温まってくると軽くなる
・運動が終わるとまた痛みが出る
・体重をかけなければ痛みがなく、体重をかけると痛みが出る
・すねの内側や外側を押すと痛みがある
・骨がきしむような感じがある
・鈍く響くような痛みがある
という症状です。
ここからは、あなたが新しくスポーツを始めたと仮定して症状の出方をお話していきましょう。
あなたは新入部員です。
入部したばかりという状況で頑張りすぎていることを自覚していないとします。
その上、「しんどい」という気持ちを周囲に漏らすことなく、多少の痛みや違和感も我慢して練習に参加しています。
「入部したばかりで休むと周囲と差がつくのが嫌だ」「監督や先輩に練習を休むとは言いだしにくい」という意識が働いてしまい、勇気を出して休んでみても「そのうち痛みにも慣れる」「痛みは練習しているうちに気にならなくなる」と焦る気持ちがあり、満足に休むことができませんでした。
この、【気持ちのサイン】と【脚の違和感】これを軽視し、放っておくと、どんどんと症状があらわれ始めます。
・歩いたり立ったりしているだけでも痛みが出る ・運動直後だけでなく、運動中もずっと痛みがある ・日常生活動作にも支障が出るほどの痛み
上記のように痛みがひどくなるとさらに悪化してしまいます。苦痛も大きくなるため、思い切りパフォーマンスができなくなります。
だいたいこの状況になっている頃は、頑張りが成果につながってきた矢先です。
この悪循環に陥っているスポーツ選手は意外と多いのです。
今までの運動環境と変わった
運動量も急激に増えた
👇
シンスプリントが発症しやすくなっている状態です。
シンスプリントが発症すると、痛みでプレーに集中できないため、記録なども伸び悩み、そのために精神面に影響が出ることも少なくありません。
少しの違和感でも些細なことと思わずに都度のケアーを欠かさないようにしましょう。
原因
シンスプリントで痛みが出るメカニズムは、先ほどお話しました。
症状を訴える方でよく聞く原因となる予想は、「急に筋肉をたくさん使ったから=過度の練習」です。
確かに運動量が急激に増えた場合に発症が多いのは本当です。
しかし、
シンスプリントの原因は
練習量の多い少ないだけではないのです。
たくさん練習をした人は、必ず、シンスプリントの痛みに悩まされるわけではありません。練習を相当量こなしても、シンスプリントには無関係の人も大勢いるのも事実です。
なりやすい要因は、大きく分けて身体的なものと環境的なものの二つがあります。
それは、【身体的要因】と【環境的要因】です。
身体的要因によるもの
①足関節の柔軟性の低下
足関節(足首)は走る、跳ぶという動きの際に、足裏への衝撃を和らげる役割をしています。足関節が硬く曲がりにくいと、足を地面に着いた時の衝撃を吸収する力が弱まり、ふくらはぎの筋肉の伸縮性が低下してしまいます。そのため、脛骨にかかる負担が大きくなって、シンスプリントになりやすくなるのです。
②扁平足
足裏の縦アーチは実は大きな役割を果たしています。それは、①と同じく運動時の衝撃を和らげる役割です。アーチが潰れた扁平足は、足を地面に着いた時の衝撃の吸収が上手くできなくなり、その上にある脛骨や筋肉に大きな負担がかかり、シンスプリントになりやすいのです。
③回内足
「かいないそく」と読みます。
足裏が地面に着いたとき、かかとの骨が内側に倒れた状態を言います。脚を後ろから見たとき、ふくらはぎ~足首~かかとを線で結ぶと正常ならばほぼまっすぐなのに対し、足首が内側に倒れて、右脚ならば「〈」、左脚なら「〉」の字に近い線を描きます。足を着いたときに内側にすき間ができ、靴の内側ばかり擦り減ってしまう人は回内足の可能性が高く、ふくらはぎの筋肉が強く引っ張られてシンスプリントの原因になります。
④回外足
回内足の反対で「かいがいそく」と読みます。
足を後ろから見た時に、回内足と逆の線を描きます。こちらもまた、ふくらはぎの筋肉の柔軟性が低く、足裏の衝撃が強いために脛骨への負担が大きくなりシンスプリントを発症しやすくなります。
⑤身体の使い方
シンスプリントになりやすい人はなりにくい人に比べて、地面を足で強く蹴るような走り方をしています。そうすると、足の指やふくらはぎの筋肉が硬くなり、すねへの負担が大きくなります。
環境的要因によるもの
①アスファルトなどの固い地面
グラウンドがアスファルトなどの場合は、土に比べて足裏への衝撃が強くなります。そのような状態で長時間の練習を続けると、シンスプリントになりやすいと言われています。
②合わないシューズ
ソールの薄いシューズやランニングには不向きなスパイクなどで走るのも、足裏への衝撃が強くなる要因のひとつです。
③運動環境の変化
先ほども述べたような、新入部員や新しい場所での運動など、グラウンドや練習メニューの変化によりシンスプリントになりやすい要因のひとつです。
病院での処置と指導
すねの痛みがある場合、まず整形外科等へ相談に行かれるでしょう。
シンスプリントは骨膜の炎症で痛みが出るため、基本的にレントゲン撮影では異常は認められません。そのため、痛みに対する処置が一般的です。
病院での処置と指導その①【安静】
痛みがある時は、まずは第一に患部の安静を保ちましょう。
練習は休むのが理想ですが、ストレッチ程度の参加であれば無理のない範囲で行っても大丈夫です。
病院での処置と指導その②【湿布や鎮痛薬】
痛みが強い場合は、局所に湿布を貼る、薬を服用する等、痛み止めが処方されます。
病院での処置と指導その③【テーピング、電気治療、アイシングなどの物理療法】
患部を固定したり、電気を当てたり、アイシングをしたりして痛みの緩和を図ります。
病院での処置と指導その④【インソールの使用】
足に合っていないトレーニングシューズやスパイクの場合は、中敷きを使用して靴の補正を行います。
病院での処置と指導その⑤【ストレッチの指導】
痛みがひどくなければ、ふくらはぎの筋肉や足関節を柔軟にするためにもストレッチは有効です。痛みの箇所や程度を確認しながら行いましょう。これらの処置で症状が軽くなれば、軽いシンスプリントということで、早期に練習に戻れることもあります。
しかし、症状に対する治療法であるため、思ったよりも痛みが長引く、良くなったと思っても再発するということも少なくないのです。
Q&A
Q.1 筋肉の硬さを取れば良い?
A.1 実際はそんなに単純な話ではありません。
ここまで何度かお話したように、シンスプリントは筋肉の硬さのせいで引っ張られた骨膜が炎症して起こります。ということは、筋肉が柔らかくなれば問題解決! マッサージに行こう! と思うかも知れませんが、要注意です!
本当の問題は「筋肉の硬さ」ではなく、
「筋肉を硬くさせる要因」にあるからです。
その要因を知らずに筋肉だけアプローチをしても、これもまた対処療法でしかないのです。
Q.2同じように運動していても筋肉が硬くなる人、ならない人がいますが、その違いは何なのでしょうか。
A.2筋肉が硬くなる人は「身体の歪みを抱えている」人がとても多いのです。
なぜ身体が歪んでいると筋肉が硬くなるのでしょうか?
身体の歪みには「骨格のズレ」「姿勢不良」「重心の位置異常」「筋肉バランスの悪さ」など人によって色々ありますが、共通して言えることは、歪みがあると体幹の大きな筋肉がうまく働かず、その分末端の筋肉がカバーしなければならないということ。身体の歪みから崩れたバランスを保つため、絶えず筋肉を緊張させて身体を支えており、どんどん筋肉が硬くなります。
この状態で運動をすることで硬くなった筋肉を無理矢理引っ張り、骨膜に負担ががかかってしまい、炎症を起こして痛みが発生するのです。
シンスプリントの場合、特に足のかかとや脚の関節の歪みが大きく関係します。
足のかかとや脚の関節にズレがあれば、そこにくっついている筋肉に、本当なら、かからない負担がかかってしまうのです。普段の姿勢や身体のバランスが、シンスプリントを発症させてしまう本当の原因であるというのは、意外な方も多いかも知れませんね。
痛みがあるのは脛(すね)なので、原因も脛(すね)にあるだろうと考えてしまいがちですが、原因は痛みのある場所にはないということが、ほとんどなのです。
当院でのシンスプリントの治療法
当院では、「原因は痛みのある場所にはない」という考えから、あなたの身体のどこにシンスプリントを起こす原因があるかを探して、治療していきます。
筋肉を硬くさせる原因は、10人いれば10人違ってさまざま。
全員に同じ治療をするのではなく、その人に合った施術を行っています。
このオンリーワンの施術が、痛みの症状を早く改善させるだけでなく再発しにくい身体をつくります。
まとめ
シンスプリントは以前に比べると、広く知られるようになってきました。
痛みがあり、歩くのも走るのもイヤになってスポーツを楽しめなくなっている方
練習ができないほどの痛みで、周囲と差が開いて悩んでいる方
シンスプリントは、正しいケアをすることで改善する症状です。
痛みを和らげる治療法だけで、不安になってはいませんか?
ぜひお気軽にご来院ください。