高校生なのに朝起きられないのは病気?実は怖い起立性調節障害


起立性調節障害の簡単チェック

まずは、起立性調節障害かどうか、病院へ行く前にできる簡単なチェックがあります。

朝起きられず、午前中具合がわるい。

☑めまいや立ちくらみがする。

☑頭痛がする。

☑腹痛がある。

☑食欲がない。

☑いつも身体がだるい。

☑乗り物酔いをする。

☑動悸や息切れがある。

☑夜、なかなか寝付けない。

☑顔色が悪い。

☑入浴時や嫌な事を見聞きしたときに気分が悪くなる。

これらにあてはまることはありませんか?
3つ以上あてはまるなら、小児科を受診することをおすすめします。

「起立性調節障害」は思春期に発症しやすいことから、受診する科は、中・高校生でも、内科より、小児科のほうがよいとされています。もともと小児科は、内科の分野の1つですが、小児科では子ども(0歳~18歳)に特化した適切な医療の提供が期待できます。

受診する場合は、事前に「起立性調節障害」の診断をしてもらえるかどうか問い合わせをしてください。そして、必ず具合の悪い、午前中に受診してください。初診が、具合の良くなってくる午後の場合は、また次回での検査となる可能性がありますので注意してくださいね。

それでは今回は、思春期に多い「起立性調節障害」についてお話します。

 


高校生のお母さん、毎朝お子さんが、起きられなくて困ってはいませんか?

5、6年前までは、あまり知られていませんでしたが、最近では、NHKでも取り上げられるようになった起立性調節障害は、かなり認知度もあがってきました。

 

起立性調節障害は気温が上がる、5月頃より発症しやすく、
気温が高い夏場に強い症状がでる病気です。

 

高校生では、実に男子で約22%、女子で約27%の頻度で自覚症状が起こっていると、日本学校保健会で報告されています。

何回か起こして起きる程度ならいいのですが、全く起きる気配がない。ようやく起きてはきたものの、頭痛がひどい、めまいがあるなどで、とても登校できる体調ではない。そして、それがもう何日も続いてしまっている。いわゆる不登校だろうか?と、とても不安になりますね。学校で何かあったのだろうか、勉強で悩んでいるのだろうか、友達とうまくいっていないのだろうか、などどいろんな疑問が渦巻きます。

 

これは、休む本人が一番つらい病気です。

 

なぜこうなるのか理由はわからず、苦しんでいます。家族の間でも、精神論(意思が弱い)や、単なる生活習慣の問題にされてしまいがちです。しかし、こうなってしまうと、ますますストレスを抱え込み、身体の問題だけでなく、心の病まで、引き起こしてしまいます。

何か理由があって学校へ行きたくない場合、休めるとはっきりしたら、食事も普通にとれるようになる場合がほとんどです。しかし、学校へ行きたくても行けないという場合は、休むと決まっても、体調は悪いままです。だいたい夕方近くになって、ようやく普通になり、夜はわりと元気であるなら、そのお子さんは、「起立性調節障害」かもしれません。決して、なまけているのではなく、友達関係も良好な場合がほとんどです。


Q.
では、何が問題なのでしょうか?

 

A.
基本的には、血液の循環・血流のバランスの問題といえます。

血流をコントロールしている自律神経の不調によって、身体や脳へ、酸素や栄養素が
うまくいきわたらず、その結果、引き起こされている病気です。

一般的(社会的)に、理解されにくい病気ですので、特に、義務教育ではない高校生の場合、学校の理解や協力を得るためにも、医療機関で、きちんと診断を受けることが重要となってきます。診断が出ることで、本人・家族も、余計なストレスを感じることなく、適切な治療を早く受けることができます。

 


病院での診断

ひと口に、「起立性調節障害」といっても、その症状はいろいろなタイプがあります。
それによって、原因も様々ですので、診断を受けることが大事です。問診から症状に応じて、基本的な血液検査・内分泌学的検査・検尿・胸部レントゲン検査・心電図など、必要な検査をします。

これらの検査で、異常が無ければ、他に問題となる病気はないということで、「新起立試験」を行います。これは、寝ている状態から、立ち上がった時の血圧や心拍数の変化を調べるものです。

自律神経が正常に機能している場合は、寝ている状態から立った状態と、
体位をかえても血圧は大きく変化をせず、安定しています。
自律神経は、姿勢を変えることで変化する重力の影響を受けないように、
血管を広くゆるめたり、短く縮こませることで、血圧をコントロールして、
血流を安定させているのです。

検査を受けるためには、具合の悪い午前中に、試験を受けることが必要です。
医療機関が遠い場合や、起床時の症状が重症な場合は、前日から入院することもあります。

 


新起立試験

仰向けに寝た状態で、血圧計などの必要な器具をつけます。
そのまま10分安静にし、血圧を測ります。これを3回繰り返して、中央値をとります。

 
医師の指示で、立ち上がり、聴診器で血流音をチェックします。
起立直後は血流音が消え、血流が回復すると音が聞こえるので、
この回復時間を計ります。

起立した状態で、1,3,5,7,10分ごとの血圧・脈拍を測ります。

これらの検査で、「起立性調節障害のタイプ」が判定できます。その上で、重症度を判定して、治療方針を決めます。

検査で異常が見られなかった場合、再検査を行います。日時によって測定値がかわることがありますので、1回の検査では、判断がつかないことがあります。再検査でも異常が無い場合で、体調不良による欠席が続いている場合は、何かほかの原因があることが考えられますので、「不登校診療ガイドライン」に基づいての診察となります。

 


起立性調節障害の4つのタイプ

【その1】起立直後性低血圧 

脳にある自律神経の中枢に変調をきたし、立ち上がった直後に強い血圧低下が起こり、
血圧の回復も遅い。立ちくらみ・めまい・失神などが起きる。

 

その2】体位性頻脈症候群

立ち上がった時に血圧低下は起こらないが、立ち上がったり、身体の向きを変えた時に、頻脈(心拍数の増加)が起きる。倦怠感、頭痛、ふらつきなどがある。

 

【その3】神経調節性失神

起立中に突然血圧が低下し、意識低下や失神を起こす。
顔面蒼白、冷や汗・けいれん発作などがある。

 

【その4】遷延性起立性低血圧

起立直後の血圧や心拍に異常はないが、起立後3~10分後に血圧が低下する。
動悸、冷や汗、気分が悪いなどがある。比較的まれなタイプ。

 


起立性調節障害の具体的な治療について

症状の重さ(軽症・中等症・重症)や、心理的ストレスの有無によって、以下の6種類の治療から選ばれます。軽症の場合は、3までの治療で、下へ行くほど、症状が重い場合の治療となります。

1、疫病教育  

この病気を、本人と本人をとりまく人々が、正しく理解することが、何より大切なのです。親の無理解によって、あっという間に症状が、重くなってしまう場合が多いので、家庭での理解はとくに重要です。

「起立性調節障害は、心理的ストレスが関わっているものの、身体の異常が原因なので、まずは身体的な症状に対して治療を行う。この病気を治すには時間がかかる。」ということを理解してもらい、決して焦らず子どもを信じて待つことを続けてもらいます。

  

2、非薬物治療

家庭での役割が大きい治療です。
薬を使わずに、生活習慣などを改善していくというものです。

 

3、学校への指導や連携

起立性調節障害という病気を知らない教職員もいます。
そのため間違った対応をして、症状を悪化させてしまうということもあります。学校側に病気の知識と理解を得てもらって、適切な対応をしてもらいます。
暑さに弱いので、体育の見学は、保健室等で行うようにしてもらう。

起立性調節障害の診断書があっても、出席扱いにはなりません。出席と認められるのは、保健室登校やフリースクールへの通学がある場合です。行きやすい環境にしておくことがとても重要です。

出席できる日に、連絡を入れる。
登校時間は本人の体調次第にする。

などの理解を得ると、保護者の精神的負担が減ります。

 

4、薬物療法

中等以上の症状場合にすめられる事があります。「昇圧剤」という血圧を上げる薬を処方するのが一般的です。しかし薬を飲むだけでは、完治しないというのもよくいわれることです。薬は一時的に症状を抑えることもありますが、薬の効果を感じるには、1ヶ月ほど必要な事が多く、親としては、高校生という成長期に、副作用を含めた身体への負担を心配せずにはいられません。

 

5、環境調整(友達・家庭)

特定の心理的ストレス(人間関係のトラブルなど)や、学校(社会)復帰のための、調整を行うものです。親子間で、ストレス要因の認識のずれがないかを確認するとともに、学校へ復帰するにあたっての不安を取り除くため、友人や学校側との調整をはかります。

 

6、心理療法

本人が希望するか、よほど深刻な場合です。
心理カウンセリングや、認知行動療法(認知=考え方を修正しながら行動を変えていく)を行います。

 


起立性調節障害の生活習慣の改善

起立性調節障害を引き起こす要因として、自律神経の不具合があります。いわゆる自律神経失調症という症状が重症化した結果、起立性調節障害という病気を引き起こしたというものです。

自律神経は主にストレスによって不具合を起こしますが、生活習慣や環境の変化によっても起こります。家庭では、生活習慣の見直しをして、改善していくことことが重要です。

 

1、朝、強い光を目で浴びる。カーテンを必ず開ける。

2、無理やり起こさない。一度声を掛けたら30分ほどしてもう一度声をかける。

できれば背中など身体をさすって、血流を促す。
下半身に血液を溜めないように、下から上への血流を意識する。

3、起き上がれるなら、ゆっくりと頭を下げたままで行う。

午前中は、なるべく光を浴びるような場所ですごす。
横になっている状態では、活動のための自律神経が働かないままになるので、ソファなどに座って、身体を起こした状態にしておく。

4、一日1.5~2ℓの水分と、少し多めの塩分をとる。(体重45㎏以上は2ℓ必要)

 

 

 

 

 

 

血流に大事なのは、水分と塩分です。睡眠時には、水分が失われていますから、起きた時にコップ1杯の補給は必要です。そして、塩分。この病気の子どもたちは、塩辛い物を好まない傾向があります。

しかし、適切な塩分を取らないでいると、血圧が低下します。血圧の低下は、血液の循環量が減るということですから、必要な量の血液が、脳にまで届かない状況になってしまうことになります。水やお茶と一緒に、少量の漬物などでの塩分を摂取するのもよい方法です。水分と塩分のバランスがよいスポーツドリンクは、糖分の多いため、飲み過ぎない注意が必要です。

 

 5.夕方の適度な運動

夕方近くになると、症状も落ち着きますので、このタイミングで運動をするのがお勧めです。散歩やウォーキングを15分程度行います。心拍数が120を超えるような激しい運動、夜になっての運動は、自律神経の働きにとって逆効果ですので、しないようにしてください。軽い運動を、毎日行うことが大事です。

 


おわりに

高校受験を突破して、志望校に合格したにもかかわらず、徐々に体調不良になり、朝起きられなくなってしまったお子さん、もしかしたら、起立性調節障害かもしれません。

まじめで、頑張り屋のタイプは、心理的ストレスにさらされることが多く、自律神経が乱れてしまいがちです。この病気は、軽い症状のうちに、生活習慣を見直すことで、回復していきます。しかし、根性論をふりかざして叱責などをしてしまうと、ますますストレスが深くなり、どんどん症状は悪くなってしまいます。

高校生の場合、欠席が多くなり学力が低下すると、転学や退学を勧められてしまうことも多いので、早めの適切な対応が必要です。

起立性調節障害について知識のある医療機関で診察を受け、食生活や日常生活の見直しを行いましょう。軽い症状のうちに治れば、大人になって再発するようなこともさけられます。

 

 

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