五十肩
五十肩(又は四十肩)と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか?
☑歳だから仕方ない・・・ ☑まだ三十代なのに・・・ ☑腕が上がらない・・・ ☑ずっとこのままなのか・・・
加齢からくる症状であるイメージがとても強いですね。なかなか治らない、もしくはずっと治らないというような、「なってしまったら最後、ずっとお付き合いしていかなくてはならない」印象を受ける方が多いと思います。
五十肩、四十肩というのは俗称で正式には「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」といいます。
なんだか大変そうな名前ですが、書いて字のごとく「肩の関節の周りに炎症が起こっている状態」と考えてください。
ん? でも、肩の関節の周りって?
肩の関節の周りってすごく漠然としていると思いませんか。
今回はこの五十肩(四十肩)である、肩関節周囲炎について解説していきます。
Q.五十肩と四十肩は同じもの? 違うもの?
A.症状としては同じものです。
40代で起これば四十肩、50代で起これば五十肩と呼びますが、30代や60代でも発症することもあります。
肩関節ってどうなってるの?
肩の構造についてお話します。
肩関節は腕から伸びる上腕骨と、肩甲骨でできています。
上腕骨の端の丸い部分を上腕骨頭と言いますが、その上腕骨頭が肩甲骨のくぼみにはまっています。イメージとしてはゴルフボール(上腕骨頭)がティー(肩甲骨のくぼみ)に乗っかっているような感じです。これを球関節と呼びます。
人間の体で球関節は二カ所だけしかなく、肩関節ともう一つが股関節です。
腕の関節や膝の関節は一定方向にしか動きませんが、肩関節は、肩甲骨のくぼみにはまっている上腕骨頭が丸いボールのような形なので、360°自由自在に動きます。
野球選手が肩慣らしをするように腕をグルングルンと回せるのも、この球関節のおかげなのです。そして、肩関節を作っているものは骨だけではありません。骨と骨が直接こすれ合わないように、軟骨や膜、腱や靭帯、筋肉で安定を保ちながら肩関節を動きやすくしているのです。
このように自由自在に動ける関節であるからこそ構造が複雑になっており、その分トラブルを起こしやすい関節であるとも言えます。
この複雑な肩関節に、何らかの要因で炎症が起こった状態が肩関節周囲炎です。
五十肩の症状
五十肩は肩の痛みがあります。時期、状態によってその痛みの程度も違ってきます。
これって本当に五十肩?
腕や肩に痛みが生じた時、「肩が痛いな、腕が上がりにくいな、これは五十肩(四十肩)だろうな、歳が歳だし・・・」と自己判断で済ませていないでしょうか?
でもちょっと待ってください!本当にそれって五十肩?
実は五十肩は、病院でレントゲン検査をしても特に異常が見つかりません。
でも痛いし、腕も上がらない、自分はアラフィフ世代(around fifty=約50歳)・・・五十肩、確定だな。と思いたくなりますがそれは早まった考え方です。
病院でレントゲン検査を受ける真の意義は、
「五十肩以外の疾患が隠れていないか」
を確かめることにあります。
五十肩に似た症状の疾患
・腱板損傷 ・変形性肩関節症 ・石灰沈着性腱板炎
その他に、内科的な疾患で肩が痛くなることもあります。
代表的なものは「心筋梗塞」です。
心臓なのに肩が痛くなるとは不思議ですが、「放散痛」「関連痛」と言って心臓が悪いから必ずしも胸が痛くなるわけではなく、肩や腰、腕や時には歯が痛くなる人もいます。
このように、肩が痛い=五十肩、四十肩と決めつけてしまうのではなく、別の病気が潜んでいる可能性を否定するためにも、一度整形外科に行き医師の診察を受けることをお勧めします。
病院での治療やセルフケア
では、改めて病院で五十肩であると診断されたら、どのような治療をするでしょう。
① 急性期の治療
・激しい痛みに対する治療のため、消炎鎮痛剤や外用薬、 または患部に直接ステロイド剤と麻酔薬の注射(神経ブロック)をします。 ・患部の安静を保ちます。全く動かさないのは難しいため、 動かしても負担がかからないよう三角巾などで固定することもあります。 ・炎症で熱を持っている場合はアイシングをします。
② 慢性期の治療
・固くなった筋肉をほぐすための理学療法や物理療法が行われます。 ・血行を促す目的で、患部を温めます。 ・肩の可動域を広げるため、ストレッチなどの自己ケアを指導されます。
③ 回復期の治療
・痛みもなくなり、慢性期以上に可動域を広げる運動が大切になってきます。 ラジオ体操やストレッチなどのリハビリを行いましょう。
*ただし、焦りは禁物です!
五十肩になってしまうのはどうしてなの?
ここまで読んでくださった方は、
そもそも五十肩ってどうしてなるのか、気になりますよね?
五十肩は肩関節の周りに炎症が起こった状態です。
その炎症が起こる原因というのは、実はまだはっきりとは解明されていないのです。
確かに年齢は大きな要素です。
加齢に伴い肩の関節や筋肉、肩周辺組織が固くなったり縮んだりするなどの変化が起こることで炎症や痛みを引き起こすため、というのが今の医学での考え方です。
けれど、40代になったから、50代になった人は全員、五十肩(四十肩)で肩の痛みを訴えているでしょうか。不安にはなりますが、皆が皆ではない気がしませんか?
いくつになっても年齢に関係なくゴルフをしたりテニスをしたり、日常でも生き生きと生活している方もたくさんいます。
逆に、年齢が若くても五十肩(四十肩)になる人もいます。
これは、五十肩になる人、ならない人で何が違いがありそうですね!
五十肩(四十肩)になりやすい人の特徴とは
五十肩に性差はありません。
年齢以外のなりやすい特徴をいくつかご紹介します。
・ケガの経験がある人
若い頃にスポーツなどで肩を痛めた経験のある人は、そうでない人より五十肩を発症しやすい傾向にあります。
また、腰を痛めたことのある人も要注意です。
腰が悪いと身体全体のバランスが歪みます。
そのバランスを保とうとして、無意識に一方の肩を上げてしまう傾向があるのです。
・姿勢の悪い人
いわゆる猫背姿勢の人は、重心が前のめりになってしまい身体に歪みが生じます。
ヒールの高い靴を履いている女性は猫背になりやすいので注意が必要です。
・パソコンやスマートフォンを長時間使用する人
デスクワークやスマホを長時間利用する人も、知らず知らずに猫背になっている人が多いようです。20代や30代で五十肩(四十肩)を発症してしまう要因はここにあります。
一日中デスクワークをしていて運動不足の人は、手をあげる機会が減り、肩関節や肩甲骨周りの筋力の低下、さらには肩の可動域が狭くなってしまいます。
・フォームが正しくないスポーツ
五十肩を発症した人が「ゴルフをしているから・・・」「水泳をしているから・・・」と言うことがありますが、ただスポーツをしているだけで五十肩になるのなら、プロゴルファーやスイマーは全員が五十肩ということになってしまいます。
良くないのはゴルフや水泳ではなく、自己流で正しくないフォームで行った場合です。
自己流の場合は肩甲骨から動かさず、腕だけを動かしてしまいがち。
これだと肩に負担がかかるため、五十肩のようなトラブルを起こしてしまいやすいのです。
姿勢と五十肩
姿勢が悪いと五十肩になってしまうとは、ちょっと意外な気がしませんか?
姿勢と肩の痛みは関係ないどころか、
姿勢の悪さ=歪みの成れの果てが
五十肩だとは・・・。
身体に歪みがある状態が長く続くことにより、肩関節にも長時間負担がかかります。
そうすると肩周り、肩甲骨周り、大胸筋周りの筋肉や関節が固まってしまいます。
筋肉や関節が固まる状態が続くことで、肩周りがガチガチになります。
その状態を放っておくと・・・
・じわじわ肩が痛くなってくる ・腕が上がらなくなってくる ・物を持ち上げようとしてもできない ・頭を洗おうとしたときなどに、腕が動かせない
などの不自由をきたし始めます。そして、肩や腕の負担が限界に達してピキッと響くような痛みが出るようになります。
姿勢の悪さは長年のクセで徐々についたもので、突発的に出るわけではなく、またご自分では気付いていない方も少なくありません。長年のクセは1日では治ることは難しいです。年月をかけて出来たクセは、時間をかけて治すしかないのです。
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